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ザ・ファブルの作者、南勝久氏の作品を読んで思う

 

ザ・ファブルの作者、南勝久氏の作品を読んで思う

 

南勝久氏の作品を読んでいると、とにかく、感じることは、元気があるということだ。南氏の代表作、「ナニワトモアレ」を読むとよく解る。

 

ナニワトモアレは、関西の走り屋たちの青春を描いた作品だ。走り屋と言っても暴走族に近いか。

 

その違いはよく解らないのだが、やる気のない私からすれば、深夜、仕事も持ちながら、改造車を運転して高速を走りまわる元気さが信じられない。

 

ナニワトモアレは、昼間は、現場仕事を行い深夜、走り屋として暴走する人たちの物語だ。

 

現場仕事の経験がある私からすれば、昼間働いて、クタクタのはずなのに、これだけ、元気なのかとびっくりしてしまう。

 

ザファブルにも、そんなエネルギッシュな南氏の思想がよく解るシーンがある。それは労働に対する考え方だ。

 

ファブルの1巻で、佐藤がゲームでもしながら、ひきこもりになろうと言った時に海老原が、叱責したり。

 

「この国では、元気な若者でも、働かなくても食っていける」

 

と佐藤に言わせたりしている。

 

それにデザイン会社の社長、田高田には、長時間労働は当たり前、そして、最初は低賃金なのは、当然のようなことを言わしている。

 

これは一面正しいと思う。

 

しかしだ、いろいろと場合によって人それぞれ問題があるケースがある。

 

この10年くらいのひどい労働環境は若者にとって苛酷すぎだ

 

私は、製造業の現場仕事やデスクワークの仕事など職種はとにかく幅広くいろんな仕事をやってきた。おそらく、大企業に勤めて10年20年やる人よりも、いろんな会社を知っていると思う。

 

そんな私が、ファブルに共感してしまうのは、佐藤たち殺し屋の過酷な世界が、この10年の日本の若者たちの労働環境にそっくりだからだと思う。

 

例えば、こんなことがあった。

 

ある中小企業の話。製造業の某技術の会社。この会社は完全実力主義を主張する会社だった。全従業員が年棒制。30歳ぐらいの人間で、10年のキャリアがあれば、月給50万円ももらえる会社だった。

 

今から、10年くらい前の話だ。

 

あの当時、製造業の中小企業で、30歳ぐらいの人間が、月給50万円なんてありえない話だった。

 

東大の理系でも卒業してITプログラマーでもならないかぎり、こんな給料なんてありえなかったと思う。それでも本当に存在した。

 

労働時間は、すごかった。おそらく、残業は、月換算で、100時間ぐらい余裕で超えていたはず。休みも週休2日ではなかった。それに仕事が間に合わなくなると徹夜仕事まであるという過酷さだった。

 

会社の仕事内容自体もすごく厳しかった。

 

ヤクザ言葉で怒鳴りつけるなど当たり前にあった。

 

結局、どうなったか。この会社はリーマンショックで破産してしまった。10億円もの負債を抱えて倒産したらしいけど、売掛金などを被った会社は大きな迷惑だったはず。

 

それに問題になったのは、住宅ローンを抱えていた人間だ。

 

月給50万円もらっていたその男も当然、新築のマンションをローンで購入していた。4000万以上のマンションを購入。その後、どうなったか知らないけど、気絶するぐらいに苦しいことになったはず。

 

だいたいおかしかったのが、その給与体系。中小企業の製造業で、30そこそこの人間が、月給50万円というのはどう考えてもおかしい。

 

この会社、倒産してみて、ひどい会社だということが判明。しっかりとした社会保険を払っていなかったのだ。つまり、高い給料というのは、社会保険を除いた給料のことで実際に真面目に厚生年金などを払っていれば、普通の会社レベルに落ちる。

 

ここからは推測になるけど、この50万円も給料をもらっていた働き者の若者は、もう、こんな高給取りになることは不可能だと思う。

 

10年もその会社に勤めて、自分の若い労働力をすべて捧げてきたものが、すべて消失した。

 

おそらく、製造業の現場仕事だと再就職で、よくもらって基本給25万円が相場だと思う。

 

この男性の精神的ショックは計り知れないと思う。こういう人間がひきこもりになってもしょうがないと私は思う。

 

再就職だってあまくない

 

それに、上記のケースの逆もある。つまり、低賃金でこき使う中小企業もある。ある現場仕事の部品製造会社などはまさに問題企業だった。部品製造の会社というのは、小さい部品だといくらでも残業することができる。

 

その会社は、手のひらサイズの部品を大量に製造する会社だった。

 

だから、残業はいくらでもある会社だった。

 

1番ひどい時で、300時間の残業なんてあった。この会社の社長が非常に悪い人間で、夜間高校を卒業したての若い人間などを洗脳してよく残業をさせていた。

 

100時間の残業なんて当たり前にやらしていたと思う。

 

まだ、19歳か20歳ぐらいの人間に。シングルマザーの家庭で、夜間高校を卒業という典型的な貧困家庭の家柄の男の子で、悪徳社長に洗脳されてよく働いていた。

 

1日も休まず、月100時間もの残業をこなせば、普通は30万円くらいは、どこの安月給会社ももらえるはずだ。

 

ところが、その子の給料を聞いてびっくりした。

 

20万円もない。基本給が、15万円とかそんなレベルで社会保障とかしっかり引かれていたせいで、100時間も残業したにもかかわらず、そんな額の給料になる。

 

やっている仕事内容に関しては、間違いなく、その会社で最も生産性が高いものだった。

 

ところが、20万円もない安月給。

 

当然、1年ほどして体調を壊して入院することになった。

 

いろんな病気にかかった。まず、目の中にばい菌が入って眼科で手術。そして、胃潰瘍、蓄膿症と連続で手術となった。そんなことを繰りかえしてついに、22歳頃には、もう歩き方からしてまともではない体になってしまった。

 

この子は洗脳されて若い労働力をボロボロにされてしまったけど、悪徳社長からは、「感謝してる」の一言と、会社の汚い自転車を1台あげただけだった。